公正証書遺言が持つ法的効力とは?:その信頼性と安全性

遺言は次の世代へ大切な財産と思いを承継するための重要な手段の一つです。
遺言の中でも「公正証書遺言」は、法的効力、信頼性、安全性から多くの人に選ばれ、弁護士・司法書士のような法律専門職も遺言を作成する際には「公正証書遺言」を基本的にはオススメします。
しかし、なぜ公正証書遺言が法律専門職にオススメされるのか。公正証書遺言の効力について知っている人は少ないかもしれません。

この記事では、公正証書遺言がもつ法的効力を中心に、信頼性と安全性がどのように遺言の効力に影響を与えるのか解説します。
遺言を通じて大切な人への思いを確実に届けたいと考えている人に、公正証書遺言の基礎知識と活用法をお伝えします。

司法書士 山本

近年遺言書のご相談が増加しております。
遺言書について正しい知識を極力わかりやすくご説明します。

この記事でわかること
  • 公正証書遺言の基本とその効力
  • 公正証書遺言作成の手続きと要件
  • 公正証書遺言の有効期限と保存期限について
  • 司法書士に遺言作成を頼むメリット
この記事を書いた人 
  • 資格
    司法書士・宅地建物取引士・家族信託専門士・簿記2級・FP
  • 経歴
    静岡県富士市出身。明治大学卒業。大学2年時より司法書士の勉強をはじめ、体育会弓道部の主将を務めながら勉強を積み重ね、平成23年司法書士試験に合格。平成25年富士市にて司法書士事務所を開業
  • 心情
    「法律を知らないで損をする人を少しでも減らしたい」を心情に、様々な法的相談や手続きを誠実・親切・丁寧な対応を心がけている。
司法書士
山本真吾
目次

公正証書遺言とは:遺言書の種類

公正証書遺言とは公正証書という方式で残される遺言書のことを言います。
ここでは、遺言について簡単に解説します。

遺言とは?遺言の種類

遺言とはその作成方式が決まっており、亡くなった際に遺言者の財産などを誰に承継させるかの意思を法的効力がある書面として残すものです。

「遺言」は法的には「いごん」と読みます。メディアや一般では「ゆいごん」と読まれるケースが多いです。

遺言は大きく分けると3種類に分けられます。

公正証書遺言とは、公正証書で残される遺言書であり、作成には公証人の関与が必須となります。

自筆証書遺言とは、遺言者が本文を自書して作成する遺言書です。

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言を作成した上で、公証役場にて遺言の存在を公証役場に証明してもらう遺言書です。遺言の内容を秘密にしたまま遺言の存在のみを公に証明できる制度ですが、現状ほとんんど使われていません。

公正証書遺言の効力とは

今回は数ある遺言書の中から最も信頼の置ける公正証書遺言の効力について説明します。

公正証書遺言の法的効力とは何か:遺言者の意思の実現

公正証書遺言があれば、遺言者が財産を誰に残したいという意思を実現できます。
財産の承継方法は様々なものがありますが、遺言書により実現できるものの代表例は以下のとおりです。

財産承継の具体例
  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定
  • 遺贈
  • 保険金受取人の変更
  • 保険契約者の地位の承継

また、財産の承継以外にも遺言書でできることがあります。

財産以外に遺言で書けること
  • 子の認知
  • 特別受益の持ち戻し免除
  • 推定相続人の廃除
  • 遺言執行者の指定
  • 祭祀承継者の指定
  • 信託

遺言書には様々なことを記載できますが、なんでもかんでも記載すれば効力が生ずるわけではありません。
遺言書で書ける内容は法律で決まっており、基本的には上記以外の内容を記載しても法的効力は生じないので注意が必要です。

無効になるリスクが少ない

公正証書遺言は公証役場で作成する遺言です。
作成時には公証人立ち会いの下、証人2名が同席し、「本人が、本人の意思に基づいて」遺言を作成したことを証明します。
そのため、後々遺言は本人が作っていないとか本人は指示されて遺言を作ったという遺言が無効になる事由が排除されます。

公正証書遺言は絶対無効にならないという意味ではありません。自筆証書遺言と比較して圧倒的に無効になりにくいくらいに捉えてください。

また遺言書の文言は公証人が作成するため、書き方の誤りで無効になるリスクもありません。

遺言書の原本は公証役場保管となります。最近では、遺言書をデータ保管することもできるので、公証役場が燃えたとしても遺言書は問題なく再発行可能となっています。

公正証書遺言の有効期限と保存期限

公正証書遺言を含め、遺言書には有効期限はありません
遺言は法律上15歳から書くことが可能ですが、15歳に書いた遺言書は80歳になっても有効です。

ただし、公正証書には保存期限があります

保存期限とは公証役場で公正証書が保存される期限で有効期限とは別のものになります。

公正証書の保存期限は原則20年ですが、「公正証書遺言」については、遺言者が120歳になるまで保存されています。
保存期間中であれば、例え遺言書を紛失したとしても再発行が可能です。

ギネス記録になっている世界最高齢は118歳とのことなので、公正証書遺言遺言が保存期間経過で再発行できなくなることはなさそうです。
参照:朝日新聞https://www.asahi.com/articles/ASR1M0132R1LUHBI02K.html

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公正証書遺言の作成

それでは公正証書遺言を作成する場合の手順を確認しましょう

公正証書遺言を作成する際の必要な要件と手続き

公正証書遺言を作成するステップは次のとおりです。

STEP
遺言の内容を考える

どのような遺言にするのか考える必要があります。
誰に何の財産をどのように渡すのか決めましょう。

STEP
必要書類を集める

遺言の内容が決まったら必要書類を集めます。
必要書類としては戸籍や印鑑証明がありますが、遺言の内容によって必要書類は異なるので確認が必要となります。

STEP
公証役場と打ち合わせ

公証人に遺言の内容を伝えて原案を作成してもらいます。
富士市・富士宮市では最寄りの公証役場は「富士公証役場」となりますが、遺言はどの公証役場で作成しても問題ありません。

STEP
公正証書遺言の作成

証人2名の立ち会いの下、公正証書遺言を作成します。

遺言を作成できるのは、遺言者本人です。
そのため、遺言者の子どもが公証役場に遺言の作成をお願いすることはできません。

遺言者本人が認知症などで遺言能力がないと遺言書の作成はできませんのでご注意ください。

遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書をただ作成するだけであれば、手間はかかりますがご自分で作成は可能です。
ただし、遺言書そのものは有効であっても手続きに必要な文言が抜けていたり当初と状況が変わったときに対応できない内容になっていたり不備が見受けられる遺言もあります。
不備があると相続手続きができなかったり、相続手続きをする際に多額の費用が必要となってしまい相続人に迷惑をかけてしまう自体も少なくありません。

司法書士に遺言の作成を依頼すれば、司法書士が遺言者の意向を聞き取った上で、遺言書に記載した方が良い内容をアドバイスいたします。
遺言の詳細な説明や相談にもお答えしますので、より確実に遺言書を残すことが可能になります。

また、遺言執行者を司法書士に依頼することも可能です。

遺言執行者とは、相続人の代わりに遺言の内容を確実に実行する責任を負う者です。

遺言者の方が確実に遺言の内容を実現してほしい場合は、司法書士等の法律専門職を遺言執行者に選任し、実際に相続が発生した場合は、相続人の代わりに預金の解約や不動産の名義変更など手間がかかる手続きを任せることができます。
遺言執行者を選任しておけば、相続人が大変な思いをすることなく、相続の手続きが終了するのでオススメです。

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公正証書遺言が無効になるケースとは?

公正証書遺言は自筆証書遺言と比べ、無効になるリスクが少ない遺言書ですが、100%安全というわけではありません。
ここでは無効になるケースを簡単に紹介します。

無効になるケースとは
  • 認知症などで遺言能力がない
  • 公正証書遺言の作成要件(口授)を欠いた
  • 証人が不適格者
  • 詐欺、強迫等で遺言を作成した
  • 公序良俗違反

認知症などで遺言能力がない

有効な遺言を作成するには、遺言の内容などを理解できる能力が必要となります。

認知症=遺言能力なしとはなりませんが、実際に遺言能力があるかどうかは公証人が判断します。
ただし、例え公証人が遺言能力があると判断し、遺言書を作成したとしても、後々他の相続人が遺言能力がなかったとして、遺言の効力そのものを無効にしてくることもあります。

実際に遺言能力があるかどうかは紛争が生じたときに裁判所が判断するため、事前に正確に遺言能力の有無を判断するのは不可能ですが、少なくとも認知症と診断を受けたことがなく、自立生活を行っており、日常の受け答えに問題がない状態であれば、遺言能力が否定される可能性は少ないでしょう。

高齢になるほど認知症の発症率は高くなるため、遺言は早めに作成しましょう。

公正証書遺言の作成要件(口授)を欠いた

公正証書遺言は作成方法が法律で規定されています。公正証書遺言を作成する際は公証人に遺言の内容を口授しなければなりません。口授とは口頭で述べることをいいます。

病気などの理由で言葉を発することが困難な場合は、筆談や通訳で口授の要件を満たすことも可能です。

証人が不適格者

公正証書遺言を作成するには、証人2名の立会が必要とされています。
証人には、未成年、推定相続人、遺贈を受ける者、推定相続人及び遺贈を受ける者の配偶者及び直系血族等はなることができない規定となっています。

証人が不適格者の場合、遺言が無効となります。

当事務所では、司法書士が証人となりますので、安心してご依頼いただけます。

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詐欺、強迫等で遺言を作成した

詐欺、強迫等があった場合、本人の意思に基づいて遺言が作成されたとは言いがたいので、民法の一般規定に従い、取り消すことが可能となります。

ただし、遺言者本人は生前中、遺言をいつでも撤回することが可能なため、事実上問題になることはありません。

よくある例としては、遺言者が死亡後、遺言に不満をもつ相続人が遺言の効力をなくすため、詐欺や脅迫を主張することがあります。ただし、その事実を立証することは通常難しいため、基本的にはあまり問題になることはありません。

公序良俗違反

遺言の内容として、不倫相手に全財産を遺贈するなどのものは、公序良俗違反として無効になる可能性があります。(判例:東京地判昭和58年7月20日)

まとめ

遺言書作成は次世代への大切な財産と思いを承継する重要な手段です。
特に公正証書遺言は、法的効力が高く、信頼性・安全性に優れているため、司法書士や弁護士のような法律専門職からもオススメです。

この記事では、公正証書遺言の基本から作成手順、有効性や保存期限に至るまで解説いたしました。
遺言書作成には複雑な法律知識が必要なため、専門家である司法書士に相談することが重要です。

当事務所では、遺言の作成から執行まで、皆様の大切な財産と思いをしっかりとサポートいたします。遺言書に関するご相談は、ぜひ当事務所までお問い合わせください。

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公正証書遺言についてのQ&A(よくある質問と回答)

公正証書遺言は検認手続きが必要?

自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言は検認手続き不要となります。

体調が悪くて公証役場に行けませんが、公正証書遺言の作成は可能ですか?

公証人に出張してもらうことが可能です。

自宅や、介護施設、病院などに公証人が出張し、その場で公正証書遺言の作成が可能です。
ただし、通常の作成費用とは別に出張費用が発生します。

遺言作成後に内容を変更したくなったら?

遺言者が存命中であれば、いつでも変更・撤回することができます。

遺言は日付が新しいものが常に優先されます。以前作成した遺言と内容が被っている場合は、最新の遺言の内容が法律上有効となり、古い遺言の内容は無効となります。

公正証書遺言をなくしてしまった場合は?

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、再発行が可能です。

遺言者の生前中は、遺言者本人が再発行できます。
遺言者が死亡した後は、相続人が再発行可能となります。

司法書士に遺言作成を依頼するメリットは?

遺言は形式的に作成しようと思えば、おそらく誰でも作成できます。

しかし、遺言は亡くなった後、適切に使えなければ意味がありません。
相続手続き時に安心して使える遺言書を作成するには、遺言や相続に関する知識が必要となります。

司法書士は遺言の作成のみでなく、相続手続きの実務経験も豊富なため、相続発生後も見越した遺言の内容をアドバイスし、作成のお手伝いをすることが可能です。

また、公証役場とのやりとりもすべて司法書士が行いますので、ご依頼者は一度依頼すれば段取りはすべて司法書士が調整し、手間をかけずに公正証書遺言の作成が可能となります。

専門家の専任担当

司法書士が相談から完了まで手続きをサポート致します。

相続・遺言・家族信託に特化した事務所

当事務所は相続・遺言・家族信託に特化した事務所となっております。豊富な経験でご依頼者様に最適な提案を致します。

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この記事を書いた司法書士

山本真吾のアバター 山本真吾 司法書士

相続手続きの専門司法書士
平成25年開業当初から相続手続中心の事務所を設立。
現在では、生前中の対策から、相続対策まで依頼者にとって最善の対策・紛争予防をご提案しております。
【保有資格】
司法書士 宅地建物取引士 家族信託専門士 日商簿記2級

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